三菱 i

三菱 i

三菱渾身のブランニューモデル「i」も、ほぼ市販車のスタイルで参考出品。今年の5月には車名と写真が発表されてて他のショーモデルに比べると新鮮味は薄いけど、それでもこのコンセプトカー然としたデザインのインパクトはやっぱし大きい。
このクルマの最大のファクターは、リアミッドシップ配置の新開発プラットフォームによる軽としては異例なまでのロングホイールベースと、それにより実現したクラスを超える直進安定性と高い居住性。全長3,395x全幅1,475x全高1,600mmという軽枠いっぱいのボディサイズに対して、ホイールベースはコンパクトクラス以上の2,550mm。この数値はエアウェイブラクティス、初代プリメーラや初代プリウスと全く同じで、コルト&コルトプラス (2,500mm) とランサー (2,600mm) の中間で、軽自動車最大のタント (2,440mm) なんてあっさり追い抜いちゃう。他にもミッドシップのメリットとして、重量物であるエンジンを車体中心近くに置くことで運動性能を向上、またフロントをまるまるクラッシャブルゾーンとして使えるため前方衝突にも強い、と。
床下にエンジンを置くと室内空間が圧迫されて居住性は損なわれるもんだけど、ロングホイールベースと短いフロントノーズで室内前後長を確保、またフィットでお馴染みのセンタータンクレイアウトの採用もあって、居住空間は十二分。唯一の難点はエンジンルームに隣り合う荷室高が制限されちゃう所なんだけど、ただ奥行きは軽自動車にしてはあるし、後席可倒式なのである程度の大物もちゃんと積めるハズ。ちなみに荷室長は標準で540mm、後席を倒して1,250mmと、奥行きだけならワゴンR (445〜1,360mm) と同じような感じ。
45度倒して後席の後方下に搭載されるエンジンは、新開発の3気筒MIVECターボ。電制スロットルでターボエンジンのネガである段付き感を抑えたり、サイレントチェーンにアルミ製オイルパンなどで騒音振動を抑えたり、「一クラス上」を演出。もちろん新型エンジンですから、現行比で10%の軽量化と15%以上の燃費改善も。eKスポーツのターボが10・15モードで16.0km/lだから、ワゴンRの直噴ターボ19.4km/lには敵わないか。
で。何といっても素晴らしいのがこのデザイン。現行マーチにプリメーラ、古くはセラとかモーターショーそのままの姿で市販されて驚いたクルマは幾つかあるけど、「i」の未来っぷりはホントにショーモデル的、だし非軽自動車的。フェンダーをはじめ綺麗な曲面を描く面や卵形のキャビンに呼応するようなダイナミックな線は、軽自動車の安っぽさ、貧乏臭さとは無縁。曲線的なデザインの軽で陥りがちな「丸」の多用をせず鋭角的な線を組み合わせる事で、男女を問わないバランスの良い仕上がりに。言ってみりゃ4人乗りスマート、みたいなカタチなんだけど、当の「4人乗りスマート」であるスマートフォーフォーがあんなんなっちゃった事もあって、むしろこっちのが正統なスマートの血、という感じ。
室内も軽自動車らしからぬ雰囲気。幅の狭さはともかく、インパネ上面のカーブや高い位置に操作系を集めたセンターパネルは質感高いデザイン。ATはゲート式だしシートのデザインもスタイリッシュだし操作系統の質感にも拘ってるらしいし、下手なコンパクトカーよりも立派。サイドブレーキが足踏み式じゃないのはコストの関係だろうけど、足踏み式嫌いなので良し。
気になるのはリアミッドシップ配置による後席の騒音・振動とアンダーステアの程度、それに軽とは思えない新開発メカニズムによるコスト。音振周りは技術力で何とかして頂くとして、軽自動車である以上、値段はやっぱり重要なポイント。ワゴンRのRRやムーヴカスタムの上位グレードが140万以上するんだからいいじゃねぇかと言ってしまえばそれまでだけど、販売台数を考えればやっぱり低価格のグレードは絶対必要。もちろん「新開発だらけ」の理由はここ数年新型車がなかったせいでもあるし、今後のモデルにはこのメカニズムが使われるんだからそこまで心配する必要もないんだろうけど。この新プラットフォームは他の軽ラインナップにも使われるらしく、'07年のパジェロミニ後継車がミッドシップになるとか。エンジンについてもスマートに供給される事が決まってる。ただ少なくとも価格帯が100万を切ることは無く、量販グレードで120万くらいかなという予想。あ、あとフロントウィンドウが大きくてワイパーが長い (シングルアームだとか) と、勢いよく水飛ばしちゃうから汚れが気になるかも。
で、何が素晴らしいってやっぱりこれだけの事を軽自動車でやっちゃった、って点に尽きると思うのです。「所詮スマートの後追い」って言っちゃえばそれまでだけど、スマートみたいなプレミアムコンパクトじゃなくってフツーに近所の三菱で買えるフツーの軽乗用車。ミッドシップ軽というと最近じゃホンダのZを思い出すんだけど、あれと比べてコンセプトが分かりやすいのも魅力。
とにかく素直に面白いし素直に乗ってみたいし素直に売れて欲しいなと思う新型軽。こういうクルマが出せるんなら三菱もまだまだ捨てたもんじゃないね!という事で、GT-Rやレクサスもイイけど、三菱ブースもちょっと注目してみましょ。