中国・上海汽車、ローバーの知的財産権だけ買収して自社ブランド車開発へ

上海汽車、自社ブランド車開発へ

ローバーも波瀾万丈というかバラ珍というか。昔は英国にたーっくさんあった自動車メーカーが、吸収合併を繰り返して出来た「BLMC」*1が今のMGローバー (もう無いけど) の基。ご存じ「ミニ」のオースチンとモーリス、ジャガーにディムラー、ランドローバーなどなど有名な各ブランドが集結した一大メーカーだった・・・んだけど、ドルショックだのオイルショックだの英国病だのユーロペシミズムだの言ってた時代に経営危機で国有化。'79年にホンダと提携してホンダ車のライセンス生産を始め、'84年にジャガーを分割民営化した後、'88年にBritish Aerospaceへ売却され再び民営化。しかし本体のBAeが多角化経営の見直しをはかる中、ホンダOEMで徐々に復調してたローバーは売り時と判断される。当然ホンダに行くのかと思いきやBAeが欲を出しちゃって、高値を付けたBMWへ'94年に売却。ローバー75 (写真) など魅力的な新型車を投入するも業績は好転せず、'00年には収益の見込める「MINI」「ランドローバー」の2ブランドを手元に残して英アルケミー・パートナーズに譲渡すると発表。FFコンパクトがどうしても作りたかったBMWはミニだけ残し、レクサスやMBみたくヨンクは自分で出せばいいじゃん、とばかりランドローバーはフォードに売っ払って損失補填。更にアルケミーとの話が破談になると、ローバー元会長のジョン・タワーズ率いる英フェニックス・グループに再建資金5億ポンド (約850億円) のオマケ付けて10ポンド (約1700円) でプレゼント。それからは残ったMGブランドで「XPower」なる本格的なスポーツモデル出したり、ル・マンやBTCC、JWRCに参戦したりして頑張ってたんだけど、昨年何と中国・上海汽車との提携を発表。しかしローバーの状況の悪さに上海汽車も手を出すのを諦め、この4月、遂に経営破綻の憂き目を見たローバーは、イラン・ホドロやらロシアの大富豪やらへの売却を模索するも失敗。と言うのも実は去年の上汽との交渉の際、現行主力車種である「25」「75」丸ごと持ってかれちゃってたんだってさ、というのが今回の前置き(長いよ
上汽はGMVWとの合弁で成功を収めているものの、「持続可能な発展」のためには自社ブランド育成が最大の課題。んでもブランドエクイティ構築できるような上級車を開発する能力はなく、合弁相手のVWにも技術供与を断られたところに降って湧いたローバー買収話。とりあえず必要な技術の契約だけ先に済ませて、多額の負債やリストラ費用を抱える会社の方はあっさり切り捨て。と。
一時はローバーそのまんま上汽が作るって話だったけど、結局中身ローバー外見上汽っていう日産&アルファロメオの「アルナ」*2みたいなクルマになっちゃうみたい。どっちにしてもローバーに残ったのは英本国にある赤字工場とMGやらオースチン、モーリス、ウーズレーにヴァンプラなんて消えたブランド。ぷち英国気分を味わえる素敵なクルマだっただけに惜しいところだけど、ミニとランドローバー取られちゃブランド力もほとんど無いし、最近はインド車のOEMで糊口をしのいでたようなモンだし、ホンダとBMWに頼り切ってた数十年をそう簡単に取り戻せるワケもなく、虎の子の最新車種と技術者まで持ってかれちゃったらもうどうしようもないもんなぁ。
それにしてもローバーは文字通り彷徨いに彷徨った挙げ句に追い剥ぎに遭っちゃったんですね、というところで今日はお終い。

*1:British Leyland Motor Corporation

*2:N12パルサーのボディにアルファのエンジンと足回りを組み合わせ、日産とアルファのイタリア合弁で作ってた